第十七章 大感動に包まれた招待公演、大成功!!
忘れがたい子どもたちとのコーラスミュージカルのステージ!!
(1・12公演感動のフィナーレ!!木下撮影)
1.明日の成功を予感、手ごたえ十分な初合体リハーサル!!
関西の大人と陸前高田の子どもたちとの<初合体>は、公演前日1月11日(土)でした。こちらとしては、とにかくステージに立つあかり・みのり・かのん・ゆきな・ほのみちゃんの一人も欠くことなく、こちらに辿りついて欲しいと、祈るばかりでした。
「今ごろは早朝の陸前高田の雪道を、子どもたちと家族を乗せたマイクロバスが出発したに違いない」、「今ごろ飛行機に乗ったかな?」「皆元気だろうか?」と、芦屋市民センターで「プログラム挟み」も完了して、今か今かと11名の到着を待ちうける関西陣でした。
さぁ15時、遂に練習場の扉が開かれましたっ!!熊谷家2名・松田家5名・新沼家3名と千葉久美子先生の11名全員そろって入って来た時はどんなに嬉しかったことでしょう!!
でも元気に、と言いたかったのですが、何と全員朝から何も食べていないお腹ぺこぺこ状態。
聞くと、陸前高田の運転手が道を間違え、仙台空港に滑り込みセーフ状態のきりぎりで飛行機に乗り、そして爆睡とか車酔い状況だったとか。すぐにでも「初合体練習」と思っていた私たちにフェイントです。
じゃあ、「子どもたちは見てて」とすぐ昼ごはんを食べてもらうことにして、大人たちだけで物語をスタートさせました。その愛らしい眼差しを目の当たりにした関西陣の私たちは、よくぞやってきてくれた感激に、気迫を湧き立たせて演じ始めました。ところがどうでしょう、「トゥモロー」の音楽が流れ出すと、次々と子どもたちは椅子から立ち上がり、「北の国の子どもたちですっ!!」に本当に登場してきたのです!!彼女たちのやる気に火が付いた瞬間でしたっ!!そしてママ役セリフの「先生、うちのケイトは」とか「うちのユイは」に大喜び、物語の中に自分たちが入ってることを実感したようでした。千葉先生も前に立って熱心に歌の指導してくださる中、1回目、2回目練習が進み、17時までになんと3回もの通し練習が完了。
17時半からはもっと響きのよいホールの会場へ移動、本格的に全員衣装を着けて、最後の通しに臨みました。子どもたちは見る見る間に歌の声を何倍も響かせるようになり、全力の演技。それに対し大人も子どもの何倍もの実力で支える必死の演奏演技となりました。この通しの中に、双方にしっかり明日の本番の成功を感じさせる手ごたえを感じることができたのでした!!
子どもたちはご家族と共に、神戸宿泊所の「ベイシェラトンホテル」ヘ。今度は神戸の夜景を見ながら、ゆっくりフランス料理にした舌鼓を打ったそうです。でも、後の感想では「量が足りなかった」との評でした、すごい食欲だね~っ!!
1・11 公演前日、芦屋市民音楽ホールでの通し稽古 衣装を着けて初合体!!
2.満場の拍手と感動の涙、夢のような楽しいステージ実現!!
さてその予感通り、檀・村嶋の数多くのステージ経験でも、「こんなに楽しいステージはなかったっ!!」と言える公演となったのですっ!!
NHKとTBSの2つのテレビ局と毎日新聞のマスコミが取り囲む、後方まで満ぱいの会場の兵庫県立芸術文化センター・小ホール。12月からチケットのお断りと「当日券販売中止」の宣言は正解であったと思わせる、当日408人(417席98%の入場率)の来場でした。満場の観客に囲まれ、今まで苦労も吹っ飛ぶ気持ちにさせてもらえる張り切りの開幕でした。
さて、第一部の檀美知生の「ドイツリート」ソロが響きだしました。あと数日で67歳(本人は68歳と間違えてしまいましたが)の身で、ドイツ語完全暗譜のすべての責任を引き受けてのソロは大きな負担であるには違いないが、このステージがあることで公演全体の芸術性をぐぅ~んと引き上げる役割を果たしたことは事実です。さらには「東北詩人の歌」も明瞭な美しい日本語で、一層心に迫る演奏を行うことができました。共演した女声アンサンブル「アモーレ」との演奏では、昨年以上に調和と訴える力のある歌声を披露することができました。
そして組曲「めぐる春に」の混声合唱のステージです。昨年結成した「奇跡の花合唱団」は初めての舞台の人も含み、幅広い層で構成されている魅力のある合唱団となってステージに登場しました。熱気のある、優しい心の籠った「今年のめぐる春に」が響き渡りました。
さぁ、いよいよ、子どもたちとのコーラスミュージカル「奇跡の街」ですっ!!
拍手がひと際大きくなります。嬉しいことに始まるや何カ所でも「笑い声」、また物語が進むに従って、会場のあちこちから涙をこらえきれずにすすり声が聞こえてきます。ああ、皆さんを物語の中へ引き込んでいるっ!!最高の観客の反応です。そして終わった後のカーテンコールの、何と割れんばかりの拍手っ!!でした。
今回はそれだけではない、それからが別の大きな感動を与えてくれるものがありました。陸前高田からを代表して、熊谷隆子さん(かのんちゃんのおばぁ様)と松田範雅さん(あかり・みのり・ゆきな・ほのみちゃんのパパ)の2人がごあいさつをくださったのです。両親を失った子どもたちの里親としての苦労と仮設暮らしの不便さの中にあって、檀・村嶋とプロジェクト員への飾りのない感謝の思いに溢れた言葉をいただけたことを、本当に嬉しく思いました。
公演をやって良かったと何より確信となったことは、公演後子どもたちが今まで以上に明るく楽しげであったこと、さらにはご家族の皆さんがその子どもたちを誇りに思い、喜んでくださったことでした。公演後の有馬温泉でどれだけ盛り上がったか、実況報告したかったぐらいです。
(左)熱唱の檀美知生とピアノ早川奈穂子 (右)檀美知生とアモーレ
(左)「奇跡の街」より白鳥とブンタ爺 (右)「奇跡の街」よりAKMYとHの演奏
3.「交流会」で感動を新たに、そして互いの理解を深める!!
でもその翌日13日(月・祝)での、陸前高田の子どもたちとご家族をTERRAホールにお招きして、団員たちとの交流会で、その一端を皆さんに伝えることができました。
ピアニストの早川さんや教育家の下橋邦彦さん、また表方をやってくださったボランティア団体の皆さんも加えて、アモーレ・奇跡の花団員の全部で36名も参加してくれました。
お寿司やお手製のお料理を食べながら、大人全員から昨日の公演の素敵な感想交換がなされました。子どもたちは習い始めているピアノに興味を示していた所、突然、子どもたちだけで「喫茶店のシーン」の演技を始めました。「まぁ、これはこれはおかぁさんたち」と、ステージに乗らなかったお兄ちゃんのみつほくんまで<先生役>で参加したのには、びっくりの、大笑いでした。子どもたちはあの「奇跡の街」にしっかり住みはじめたのだと思いました。楽しかったのは大人だけではない、子どもたちもまたどんなに楽しかったのか、を思いました。
これを明日を生きる勇気とエネルギーにして欲しい、あの被災地に帰っても、これから辛いことがあっても、自分たちにはこの瞬間があったのだと思って欲しい。またこれだけの人間が応援していることを覚えていて欲しい。願わずにはいられませんでした。
そして今、私たちは思うのです。このステージを「陸前高田」の皆さんに見て欲しいと。
そしてこのはつらつとした子どもたちの姿こそ、被災地の「希望の灯り」なのだと。
また同時に関西で生きる人間としての責任を思うのです。我々は、その目でその耳で「陸前高田」の被災者の子どもたちとその家族と出会ったのだということです。苦難の中もけなげに生きる人の存在を。さらには19年前の阪神淡路大震災の記憶をより新たに、思いを深めていかねばならないということも。そしてその深まった思いで今後一層、東日本の復興支援をより強く願う輪を広げていきたいと思うのです。最後のセリフが胸に響きます。
「大人になって帰っておいでっ!!応援しているよ――っ!!」
(左)1月13日AM 神戸フルーツフラワーパークにて陸前高田の子どもたちと檀
(右)1月13日PM 芦屋TERRAホールにて陸前高田のみなさんと団員たちの交流会
4.最大の話題性で報じてくれたマスコミ報道!!
今回の取り組みほど、たくさんのマスコミ各社から取材申し入れを受けたことはありませんでした。新聞社は取材を受けた毎日新聞と河北新報以外に、あと6社からの申し込みがありました。テレビ局も他社からの申し込みがありました。すべてお断りをせざるを得ない状況でした。
その理由は、東北の子どもたちの尊厳とプライバシーを気遣ったこと、また私たちの活動の本意を理解してもらい、丁寧な取材をしてもらいたいとの思いからでした。
例えば向こうの皆さんの「お名前や被災状況」などの報道です。また取材に応じる時間を随分取っていかねばならない、特にテレビは放映される時間の100倍以上の時間、カメラは回っていました。坦当の記者さんたちとの話合い、それを陸前高田のご家族の皆さんに伝え、向こうの意向を掴むことが重要でした。また私たちの14回訪問ばかりでなく、阪神淡路大震災からの音楽活動も膨大なものでした。今回はNHKさんが熱心に私たちサイドからの活動を3回にも渡って放映。TBSさんも「ニュース番組」ですばらしいコメントを入れての全国放送、毎日新聞・阪神支局さんは「プロジェクト開設」以来何度も掲載してくださっている一環としてすぐに記事にしてくれました。いい報道をしてもらえたことは、私たちの活動を世に示すことができ、向こうの現地の皆さんにも嬉しいこととして受け止められました。これは私たちにとって最も嬉しく思うところです。
ただ公演前の時期でしたので、我々もステージに立つための準備が間に合わなくなる恐れと、体力的な問題とのせめぎ合いがあったことは事実です。お断りしたマスコミ各位の皆様には、またのタイミングでのお出会いがありましたら応じさせていただきます。その折もこれだけの気遣いでの家族の皆さんとの会話を重ねていることですので、今後も私たちを通しての取材にしていただき、直接の陸前高田の皆さんへの取材はお控えください。
さて、次は?と言われると、この「奇跡の街」を陸前高田の皆さんにも見てもらいたい、あの子どもたちと関西陣の熱意ある素晴らしい演奏演技を見て一緒にその街に住んでもらいたい、そして「奇跡の街」に復興実現する願いを共に思いたいのです!!
向こうは被災地なのでこちら以上に条件がありますが、また一歩ずつ積み上げて努力していきたいと思っています。どうか、皆様、応援のほどよろしくお願い申し上げます。
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