第ニ十四章 2つの大震災を繋いだ
「阪神淡路大震災二十周年記念公演」大成功!!
1.コーラスミュージカル「光る風の街」誕生!!
2014年度プロジェクトは、「第7回檀美知生リサイタル」は<阪神淡路大震災20周年記念>の
公演で実施する決意からスタートした。
私たちの東北支援活動の原点が、阪神淡路大震災の被災と復興体験にあった、さらには18回の東北訪問を重ねて、「この20年に向き合わねば」との思いが深まっていったからである。
東北の被災者の「今」の思いは、「孤独死」を出した私たちの街の住民の心と同じものであり、忘れ去られようとしている「過去」を掘り起こし伝えてゆくことの大切さを切実に感じたからだ。
第1部に<檀美知生のソロステージ>を持つと共に、第2部は<コーラスミュージカル>新作作品に取り組んだ。
コーラスミュージカルのステージは、檀・村嶋が「合唱団TERRA」を主宰していた時に開発した。
阪神淡路大震災時に、その集団のパワーとキラキラ光る個性の演奏演技で、潰れ果てた街への蘇りを人々に予感させ、本当に励まし続けたものだった。
震災のテーマはかつての時には、被災のイメージを和らげるために主人公たちは人間ではなく「猫たち」にしたり、最近の『奇跡の街』でも「架空の街」を舞台とした。
しかし新作作品は、阪神淡路と東日本の2つの大震災を乗り越える街物語とし、舞台も現在の神戸阪神間の商店街、今を生きる人々の街物語に正面から取り上げることにした。
これが「20年目」の意味を重く考える、コーラスミュージカル「光る風の街」の物語の誕生だった。
2.「風の宮の街の住民」と共に築いた舞台!!
コーラスミュージカルにはキャストを演じ切る「役者」と感動の合唱を響かせる「コーラス隊」の両者が存在しなければならならない。
魅力溢れる舞台づくりに大切なのは、一にも二にも舞台の「街に住む人々の存在」、団員確保がとても重要なこととなった。
効果音の吉竹先生からも脚本を送った所、「相当本格的(なコーラスミュージカル)ですが、大丈夫ですか?」との心配の声をいただいた。
ある程度のキャストの団員確保はメドをつけられたが、<コーラス隊>の確保が後半期まで必要となった。
その中で朝日新聞、毎日新聞の協力を得ることが出来、「公募での募集」に乗り出した。
その結果、10数名の皆さんが集まってくれた。むろんコーラスミュージカル初体験の皆さんだった。
でも、集まった皆さんの歌声を聴いて、私たちは確信した。
こんなにやる気に満ちて明るく、そして若々しい(実際に中高生の皆さんもいて)歌声なら、きっとコーラスミュージカルの魅力、楽しさを体現してくれるに違いないと!!
その予感はピッタリあたっていた。未熟であってもどの場面でも皆は本気の歌声、本気の演技で頑張りだした。
そして1つ1つのピースを積み上げるように、各場面に挑み、11月には見えなかった全体像を出現させていった。
それがこの取り組みの醍醐味だった。12月にはそれに魂が入った。
演技指導の久語孝雄さんのアドバイスは本当に的確だった。
久語さんご自身、全壊の自宅に生き埋めになった被災体験の持ち主で、かつリアリズム演劇に精通された方の指導を受けられたことは、本当に幸いであった。
練習の積み重ねの最後には、団員たちは何といきいきした<風の宮商店街住民>になっていったことだろう!!
3.圧巻の本番、陸前高田の子どもの出演と「津波映像シーン」!!
今回の挑戦は3年続いた芸文センター400席から、芦屋ルナホール700席のチケット販売にもあった。
でもすでに11月末には販売枚数400枚を優に超え、「ああ、ルナホールにして良かったっ」との思いを強くすることができた。
これなら「東北から関西に来られている避難の人たちや障がい者」をたくさん無料招待できる、とその呼びかけを広げていくことができた。
こうして本番当日までに満席の枚数が完売された。
そして訪れた本番当日、3階席までほぼ満員の観客で埋め尽くされた。
満席の会場の中、檀美知生のテノールの歌声が美しく響いた。今回はイタリア近代歌曲に挑み、
今までの中でもパーフェクトに近い演奏を成し遂げた。
クラシックの格調高い第1部に支えられ、いよいよ第2部のステージが始まった。物語の展開、笑い
や涙の熱気のある私たちの演奏演技も今まで以上の高い感動を呼ぶことが出来た。
その中で練習にはない<たった一度>の場面だったのは、陸前高田の子どもたちの「特別出演」の
場面だった。関西陣の熱演の演奏演技の間に、5人の澄んだ歌声はとても効果的な感動を呼んだ。シーンと静まりかえった会場の心へ沁み込むように、天使の歌声は響いた。
さらには最も圧巻は本物の「津波映像」のシーンだった。我々の歌う<アヴェマリア>の歌声と共に
最も強いメッセージを観客に伝えた。この映像は、「大船渡津波伝承館」の館長の斎藤賢治さんが、
実際の東北大地震発生直後から街が津波に飲み込まれていく様をつぶさに撮影したもので、それ
を映像許可を得て使用したものだった。物語のヤマ場、主人公が自らの被災体験を吐露する場面
だった。観客のあちこちからすすり泣く声が聞こえた。
4.たくさんのボランティアに支えられて!!
今回「兵庫県」「木口財団」からの助成金、「コスモス会」「こまくさ会」のボランティア団体からの日常活動での支援カンパ金をいただいた。
だからこそ陸前高田のご家族と子どもたち9名をご招待できた。
また受付は芦屋ボランティア連絡会の皆さんたちが快く引き受けてくださった。
「東北避難者」招待者の取りまとめをしてくださったボランイテアの協力も得た。
今回は関西の地元のマスコミが積極的に取り上げてくれた。
さすが「阪神淡路」の体験エリアならでは協力をしていただいた。
前述の朝日新聞・毎日新聞は2回も取り上げてくれた。
サンテレビでは後日に公演も放映してくれた、兵庫県の広報課のプログでも紹介してくれた。
また震災をきっかけに創設された、西宮「FM さくら」に檀・村嶋を生出演させてくれた。
どれもこの大成功に大きな役割を果たしてくれた。
たくさんの力を寄せ合って、この公演の感動を得ることが出来た。
まるで公演に辿り着くことそのものがコーラスミュージカルの物語のようだった。
最後にひと言付け足すと、陸前高田の5人の子どもたちの実力は「1曲」だけではもったいないと、その力を知る私たちは思い、彼女たちとの次の取り組みへの意欲を燃やしている。
乞うご期待!!
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